日本酒には生酒と呼ばれるものがあるのをご存じでしょうか。
この生酒は、一般的な日本酒とは大きく異なる日本酒です。
今回は、生酒とはどのような日本酒なのか、保存方法やおすすめのおつまみなども併せて紹介します。
生酒ってどんな日本酒?
生酒とは、火入れを行わず瓶詰めされた日本酒を指します。
日本酒の分類では爽酒に区別され、読み方は「きしゅ」ではなく「なまざけ」となります。
生酒と一般的な日本酒が異なる点は、その製造工程にあります。
通常、日本酒は製造工程において、火入れが行われます。
火入れとは加熱処理のことで、60度前後で低温殺菌を行います。
そうすることで、生産者側が意図していない熟成を止め、白く濁ったりするのを防ぐなどの効果が期待できるのです。
そうした工程を踏まない生酒は、品質の低下が早いという欠点こそあるものの、
非常に爽やかで軽快な口当たりと、原料となったお米の風味をダイレクトに感じることができるのが特徴です。
ちなみに、生酒の他にも「生貯蔵酒」や「生詰め酒」といった日本酒も存在していますが、これらは火入れを行って製造されている日本酒であり、純粋な生酒とは異なる日本酒となっています。
生酒を美味しく飲める消費期限と保存方法
生酒は一般的な日本酒より、保存法に気を遣う必要があります。
なぜなら前述したように、生酒は火入れを行わずに製造されているため、非常にデリケートな日本酒であるから。
外気温や日光の影響を受けやすく、品質の劣化は一般的な日本酒よりも早いのです。
月桂冠酒造では、一般的な本醸造酒や普通酒の賞味期限が製造年月より数えておよそ1年ほどとしているのに対し、
生酒では製造年月よりおよそ8ヵ月が目安であるとしています。銘柄によっては賞味期限がもっと短くなっているケースもあるようです。
そして、保存しておく場合は常温ではなく、なるべく低温で暗い所がベターです。生酒のラベルを見てみても、冷蔵と記載されている銘柄がほとんどのようです。
また、開封後はより劣化が進む可能性があります。
なので、寝かせるなど考えず、なるべく早く飲み切ってしまうのが鉄則です。
生酒は繊細なお酒であり、最も美味しく味わえる期間はとても短いことを覚えておく必要があるでしょう。
生酒にも種類がある
実は、1口に生酒といっても2種類が存在しています。
これらは、製造工程の中で行われるろ過や割水(水を加えることでアルコールの割合を下げ、味わいのバランスを調整する作業のこと)といった工程があるかないかで区別されます。
1つ目が「生原酒」と呼ばれる生酒です。
この生原酒は、原酒に割水し、ろ過機に掛けることで色や雑味成分を取り除かれて瓶詰される日本酒を指します。
フレッシュさに加え、ろ過器を通ったことで口当たりに軽さがプラスされます。
そのため、非常に飲みやすく、生酒に飲み慣れていない人にもおすすめの生酒だといえるでしょう。
2つ目は「無濾過生原酒」と呼ばれる生酒です。
この生酒は、もろみから絞られたままろ過器も通さず割水もされていない純粋なお酒です。
不純物を澱として沈殿させることで上澄みを抜く「澱引き」という行程以降、人の手が加えられていないことになります。
そのため、正に出来立ての状態であり、その味わいは濃厚で原料となったお米の味や風味を力強く感じることができます。
日本酒ファンの間でも根強い人気を誇っています。
生酒に合うおつまみを用意しよう
生酒は、銘柄によってさまざまな料理に合う日本酒です。
特に、その口当たりからさっぱりした味わいの料理との親和性が高いとされています。
冷奴や刺身、野菜などのみずみずしいおつまみは相性抜群です。
他にも、焼き魚や肉料理とのペアリングもおすすめとされ、フレッシュな生酒の風味が肉や魚の持つ素材の味を引き立ててくれる効果が期待できるでしょう。
また、これらのおつまみと合わせる際、生酒の飲み方は冷や(常温)かぬる燗がおすすめです。
熱燗になるまで温めてしまうと、生酒本来の風味が失われてしまう可能性があるので注意が必要です。
爽快な口当たりを楽しみたいのであれば、冷やしたり氷を入れてロックにして飲むのもおすすめの飲み方です。
フレッシュさを味わいたいなら生酒を!
火入れをせずに造られる生酒は、基本的な日本酒にはない飲み口の軽さとフレッシュさが持ち味です。
量販店での取り扱いが難しく、地方の酒蔵だけで販売されているような珍しい銘柄も数多く存在しています。
冬は、できたての生酒が出回る季節でもあります。
さまざまな酒蔵に足を延ばし、銘柄の生酒を飲み比べるのも、日本酒の楽しみ方の1つかもしれません。