酒米の代表格『山田錦』を徹底解説

日本酒造りには、食用の白米とは異なる酒米が使われますが、その中でも山田錦と呼ばれる品種は、酒米の中でも代表格とされています。

今回は、山田錦が酒米の代表とされる理由や特徴について解説していきます。

山田錦ってどんな酒米?

山田錦は酒米の王様とも呼ばれ、ブランド力・人気・作付面積いずれも日本を代表する酒造好適米です。

読み方は「やまだにしき」であり、生産は全国的に広がっています。
特徴としては米の粒が大きく光沢があり、心白米(米粒の中央部に円形あるいは楕円形の白色不透明部分のあるもの)であるため、米の中心部より麹菌糸が繁殖して行きやすく、力強い麹を造るのに最適なのです。


また、食用の白米と異なりタンパク質の割合が少ないので、出来上がった日本酒は雑味が抑えられ香りも豊かになる傾向があり、コクの深い味わいに仕上がります。
日本で山田錦の一大産地となっているのは兵庫県であり、令和元年の生産量は兵庫県産が全体のおよそ60%ほどを占めると、農林水産省によって報告されています。

山田錦が酒米の王と呼ばれるワケ

山田錦が酒米の王様と呼ばれるのは、山田錦を使って作られた日本酒の質の高さが挙げられるでしょう。

日本酒ブームの火付け役になったとも言われている旭酒造の『獺祭』を始め、根強いファンが多い車多酒造の『天狗舞』、キレのある飲み口に定評のある剣菱酒造の『剣菱』など、一度は名前を聞いたことがあるような錚々たる銘柄や高級吟醸酒が山田錦を原料としています。
日本酒の銘柄が持つブランド力が、山田錦を酒米の王様と言わしめている要因の1つなのです。
さらに、山田錦が原料として価格が高いことも王様と呼ばれる所以でしょう。その年の収穫量やその他の要因で取引価格は上下動しますが、山田錦の価格は他の酒米と比較して1.2から1.5倍ほどの価格が付けられることが一般的です。
その上、山田錦は高精白されることが多く、他の酒米と同じ量の日本酒を造ろうとすると、それだけ大量の山田錦を使わなくてはならなくなります。

そのため、製造された日本酒も価格も高くなる傾向にあり、米も日本酒も高級品に分類されるというワケです。

山田錦のルーツを辿る

現在でこそ岡山県や山口県、福岡県など全国に広がっている山田錦ですが、その歴史を探ってみると、起こりはおよそ100年前にまで遡ります。
山田錦が生まれたのは、大正12年のこと。兵庫県の県立農事試験場にて「山田穂(やまだほ)」と「短稈渡船(たんかんわたりぶね)」を掛け合わせて開発されました。

その後、品種改良を重ね、山田穂の「山田」と当時品種に一般的な名前として付けられていた「錦」を組み合わせて昭和11年に「山田錦」と名付けられたのです。
山田錦が生まれたのは兵庫県であることは前述した通りです。

そのため、山田錦の育成栽培には兵庫県の気候や土壌が最も適しているとされています。
特に、三木市の吉川町、加東市の東条町及び社町は、特に良質な山田錦が生産される場所として「特A地区」と扱われます。
山田錦には規格外から特上まで6つの等級に分けられますが、この特A地区で栽培された山田錦は非常に質が良く、特上に分類されるほど極上の山田錦となるのです。
特A地区の山田錦が使用されている場合は、ラベルにしっかり表記されるため、日本酒を店頭で購入する場合は特A地区表記の銘柄を探してみるのも面白いかもしれません。

一度は飲んでみたい!山田錦を使って造られた憧れの日本酒銘柄

山田錦を使った日本酒は数多く存在していますが、中でも日本酒ファン憧れの銘柄はいくつかあります。ここでは、厳選した3銘柄をご紹介します。

旭酒造『獺祭 磨きその先へ』

旭酒造の『獺祭 磨きその先へ』は、それまでラインナップの中で最高級だった『獺祭磨き二割三分』を超える日本酒として生み出された旭酒造の傑作日本酒です。

販売価格も、720mlで33000円と文句のつけようのない高級品ですが、従来の純米大吟醸のスタイルとは全く別のものとなっており、まさにプレミアムな味わいを堪能することができるでしょう。

黒龍酒造『黒龍 無二』

『黒龍 無二』は、実はかなり高い確率で飲むことはできません。

なぜなら、2018年に開催された黒龍酒造が企画した入札会の場でのみ出品された銘柄であるため。
2012年から2015年にかけて造られた最高級の純米大吟醸酒を、ヴィンテージごとに氷温熟成させた逸品ですが、入手は非常に困難です。

運よく手に入れることができたなら、飲むのがもったいなく思えるかもしれません。

ヤヱガキ酒造『栄雅 純米大吟醸』

『栄雅 純米大吟醸』は、特A地区の山田錦を30%まで磨き込み、蓋麹法という伝統製法と名勝・鹿ヶ壺を源流とする揖保川系林田川の伏流水を使って仕上げたプレミアムな1本です。
酒袋にもろみを詰め、自然の重力だけで日本酒を搾る袋絞りで絞られることで、余分な雑味を抑えて日本酒本来の味わいだけを抽出。滑らかでふくよかな米の香りを堪能することができます。

山田錦で作られた日本酒を味わってみて

山田錦は、現在流通している多くの日本酒の原料となっています。

他の酒米を使った日本酒と比較してみればその違いはすぐに分かるはずです。

酒米の王とも呼ばれる山田錦を使った日本酒をその歴史や産地に思いを馳せつつ、ゆっくりと味わってみてください。

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