日本酒の山廃仕込みとは?おすすめ銘柄や飲み方も紹介

  • 山廃仕込みとは?生酛との違いって?
  • 山廃の美味しい飲み方って?
  • 山廃のおすすめ銘柄が知りたい

こんな疑問はありませんか?

山廃造りで醸された日本酒は、骨太で独特の強い酸味と苦味が感じられ、深い味わいとキリッとした後味が特徴的です。

今回は、山廃仕込みがどのような製法なのか、生酛造りとの違いを解説します。

また、山廃のおすすめの飲み方や銘柄も紹介していきます。

山廃を知るには生酛を知ろう

山廃がなんであるかは、まず日本酒製造における生酛(きもと)を知る必要があります。

生酛造りとは、日本酒の元となる米を発酵させるための酒母造りに関係しています。

そもそも、酒母は速醸系と生酛系の2種類に分けられています。

速醸系の酒母が醸造用の乳酸を人の手で加えて造られるのに対し、生酛系の酒母は日本酒を造るうえで欠かせない乳酸菌を自然の力で1から育てるものです。

生酛系の酒母を造るためには、蒸した米をすり潰す作業が必要となります。

この作業を山卸しと呼びますが、山卸の作業を経て造られるのが生酛です。


山廃と生酛の違いとは?

山廃とは、正式には「山卸廃止酛仕込み(やまおろし はいし もとじこみ)」と呼ばれます。

つまり山廃とは、生酛を造る段階で山卸の作業を省いたものということになるのです。

そして、この山廃を用いて仕込みをすることが、山廃仕込みになるという訳です。これが、山廃と生酛の違いとなります。

山卸は人の手で米をすり潰し、米麹を合わせて糖化を早めるための作業ですが、山廃は麹の酵素が米のデンプンを糖にしてくれる働きを応用した技術なのです。

また、前述した速醸系の酒母はおよそ2週間ほどで出来上がるのに対し、山廃は完成まで30~40日と倍ほども時間が掛かります。

非常に手間が掛かるうえ、製造する段階で酒蔵毎の特徴も出やすい仕込みだとも言われています。


伝統の高温山廃仕込みを守る酒造

徹底した温度管理の中で造られる山廃ですが、千葉県のいすみ市に1879年(明治12年)に創業した木戸泉酒造は、全国的に見ても非常に珍しい高温山廃酛と呼ばれる独自の酵母造りを行っていることでも知られています。

高温山廃酛とは、高温糖化酛の工程の中で乳酸を入れる代わりに乳酸菌を入れる新しい酛つくりであり、それを用いてこだわりの高温山廃仕込みの日本酒を造り続けています。

昭和31年に高温山廃酛を導入した後、その特徴を生かして、長期熟成酒の開発に取り組んでいることでも有名で、最も古いものでは40年を超す古酒が静かに蔵で熟成を重ねています。


山廃仕込みの日本酒の味わい

速醸系の酒母を用いて造られた日本酒は、意図的に乳酸を加えて発酵させるため短期間かつ安定した品質の日本酒を造ることができます。

さらに、乳酸菌を始めとする微生物の存在が少ないため、すっきりと淡麗な味わいに仕上がるのが特徴です。

一方、山廃で仕込む日本酒は微生物や菌が非常に多く、山廃が乳酸菌と同居するために濃厚な口当たりと豊潤な香りの日本酒に仕上がります。

豊かな旨味や酸味が幾重にも複雑に折り重なり、香りこそ穏やかですが樹木のような爽やかさを感じることもできます。

さらに、酒蔵毎の特色を感じやすいのも特徴の一つであり、特定の酒蔵の山廃仕込みをこよなく愛し続けているようなファンも少なくないようです。


山廃仕込み日本酒のおすすめの飲み方

日本酒は、特徴によって熟酒・醇酒・薫酒・爽酒の4種類のタイプに分類することができます。

山廃で仕込まれた日本酒は醇酒に当たります。

豊潤で米の旨味が強い醇酒は、15度前後に冷やすか、常温~ぬる燗位まで温めて飲むのがおすすめです。

もちろん、銘柄によって適した飲み方が異なることは言うまでもありませんが、素材本来の味わいに加え、ふわりと花が開くような香りを楽しむことができます。

また、山廃仕込みの日本酒はお酒自体の味が強い傾向にあるため、基本的に濃い味付けの料理やおつまみに合うとされています。

スパイスの効いた肉料理や魚の煮付け、燻製のチーズやハムなどを合わせるのもおすすめです。


山廃仕込みのおすすめ日本酒銘柄

山廃仕込みの日本酒は、数多くの酒造で造られています。

ここでは、こだわりの山廃仕込みの日本酒を厳選してご紹介します。


『天狗舞 山廃純米大吟醸』

米と水にこだわって造られる銘酒・天狗舞。

『天狗舞 山廃純米大吟醸』は、中でも特別な1本です。

米の旨味を最大限引き出すために考案された独自の山廃酒母造りで仕込まれ、芳醇でありながら、潔くクドさのない香りと風味を持ち合わせています。


『菊姫 山廃純米』

山廃で仕込んだ日本酒の定番とも呼ばれるのが、この日本酒です。

昭和58年に、日本で初めて山廃仕込と表示して発売され、以来ロングセラーとなっている1本です。

山廃仕込みらしい濃厚かつ豊潤な口当たりが特徴的です。


『飛良泉 山廃純米 マル飛No. 77』

『飛良泉 山廃純米 マル飛No. 77』は、室町時代の1487年に創業という、日本で3番目に歴史が古い飛良泉本舗が手がける日本酒です。

名称になっているNo.77とは酵母菌の番号であり、発酵段階でリンゴ酸がキレのある酸味を生み出します。

その口当たりや風味は白ワインにも例えられ、他の山廃仕込みとは異なる特徴を持っています。


『木戸泉 純米 醍醐』

こちらは、前述した高温山廃仕込みで造られた日本酒です。

千葉県内外に多くのファンを抱え、酒造好適米の王様と呼ばれる山田錦の旨味と、乳酸菌に由来する僅かな酸味が特徴。

燗を付けた後、冷まして飲む「燗冷まし」でも味わいが薄れない芯の強さで知られています。


『雪の茅舎 秘伝山廃 純米吟醸』

『雪の茅舎 秘伝山廃 純米吟醸』は、秋田県で明治35年に創業、敷地内の建物は11棟が国の登録有形文化財に登録されているという歴史ある酒蔵が手がける逸品です。自家培養された酵母と良質の酒米を使用し、低温の長期熟成で素材の味を最大限引き出した芳醇な日本酒です。


定番に飽きたら、山廃仕込みの日本酒を楽しもう

数ある日本酒の中でも、素材となった米の味や乳酸菌の存在をダイレクトに感じることができるのが山廃仕込みの日本酒です。

その味の強さから、喰わず嫌いをしている人もいるかもしれませんが、それはもったいない!

日本酒本来の姿とも言える山廃仕込みの日本酒。この機会に試してみてはいかがでしょうか。

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