日本酒造りのプロ!杜氏のことを知っていますか?

杜氏とは日本酒造りにおいていなくてはならない存在です。

酒蔵で働く人は大勢いますが、杜氏と呼ばれるのはその酒蔵でたった1人だけ。

杜氏とはいったいどのような仕事なのでしょうか。


杜氏とはどういう人を指すのか

酒蔵でいう杜氏とは、読み方は「とうじ」であり、酒造りにおける最も高い位の責任者を指します。(地方によっては「とじ」という言い方もある)

酒蔵に務めていてお酒を造っている全ての人が杜氏と呼ばれることもありますが、それは誤りであり杜氏は1つの酒蔵に1人しかいません。

酒蔵のオーナーに当たる蔵元より、酒造りに関する全てのことを一任されているため、例え蔵元であっても酒の作り方に関して、杜氏に口出しすることはできません。

蔵内の管理はもちろん、原料の扱いから、酒しぼり、貯蔵、熟成まで、全ての工程に目を配っています。つまり杜氏とは、酒造りにおけるチーム監督のような存在なのです。


杜氏の歴史

古くは春夏秋冬、神事が行われる度に酒づくりが行われてきました。本来、酒は神のものだったため、神々に使える女性たちが酒造りを担っていたとされています。その女性達をまとめる役に付いていた女性のことを「刀自」と呼んでいたそうです。

時が経つにつれ、酒造り自体が大型化。力仕事という側面が大きくなり、女性は酒造りに関わることができなくなっていきました。男性が中心となって酒造りを行うようになった後、発音のみが残り「杜氏」と呼ばれるようになったのです。

江戸時代に入ると、幕府が酒造りを規制するようになります。

さらに、酒造りは冬に行われるようになり、酒の品質が寒さで高まったことから酒造りは寒い時期に集中。

杜氏という役目自体は寒い時期でも稼ぐ方法として、当たり前のことになっていったとされています。


杜氏の手が綺麗は本当か

良く、日本酒の製造に関わる杜氏の手は綺麗だと言われます。これは恐らく日本酒の原料となる米麹に美容・保湿成分が含まれているためでしょう。

しかし、基本的に日本酒造りは寒い時期に行われるものであり、水仕事がほとんどです。そのため、あかぎれがあったり荒れていることが基本のようです。

ただし、現在では衛生面などを考慮して、手袋を付けて作業している杜氏がほとんどだとか。杜氏の手が特別綺麗というのは、都市伝説に過ぎないようです。


日本三大杜氏の存在

杜氏は全国に分布しており、出身地によって呼び名が変わります。出身地が異なると、酒造りの手法が異なるばかりでなく、受け継いだ技法や歴史もさまざま。ここでは、日本三大杜氏と呼ばれる杜氏を紹介します。


丹波(たんば)杜氏

丹波杜氏とは、兵庫県の篠山市周辺を出身とする杜氏集団です。日本で最も大きな規模を誇り、業界における影響力も高いと言われています。

丹波杜氏酒造記念館によると、その歴史は宝歴5年(1755年)、篠山曽我部(現在の篠山市日置)の庄部右衛門が、池田の大和屋本店の杜氏となったのが起源とされています。

現代でも銘酒として知られている「剣菱」や「男山」を生み出した杜氏として知られており、今でも親しまれている灘の銘酒はほとんどが丹波杜氏の手によるものとされています。


越後(えちご)杜氏

越後杜氏は、新潟県を出身とする杜氏たちのことです。越後杜氏の中でもさらに流派が分かれており、三島(さんとう)、刈羽(かりわ)、頸城(くびき)の3流派、もしくは、三島杜氏を越路杜氏と野積(のづみ)杜氏の2つに分けて4流派とする考え方が存在しています。

最盛期には922人もの杜氏がいたとされていますが、現在では100人を下回るほど少なくなりました。

当時の酒造りの様子が描かれた酒造図絵馬が新潟県内には3点残されており、長岡の松尾神社と根立寺、そして柏崎の松尾神社で越後杜氏たちの仕事ぶりや当時の雰囲気に触れることができます。


南部(なんぶ)杜氏

南部杜氏は、岩手県石鳥谷町を拠点とする杜氏たちのことです。時は1606年、当時の南部藩下で清酒製造が産業として始められ、1798年になると江戸より200石分の注文を受けるほどまでに成長したとされています。

南部杜氏たちの技術力は非常に優れていたとされ、当時の仙台領内と比較して南部杜氏は同じ量の米から1.6倍もの酒を作り出すことができたといわれています。


杜氏になるには?

杜氏になるには、非常に長い下積みを経て豊かな経験を積む必要があります。

酒蔵内で雑用がかりにあたる追いまわしから始まり、精米の担当、米を蒸す職人の助手を経て、槽や麹、酒母といった酒の出来不出来に深く関わる職を経験しなければなりません。

さらにその後、酒造りに携わる蔵人たちをまとめる頭といった要職に付いたのち、認められることでようやく杜氏になることができるのです。

長きにわたる修行が必要と言われている杜氏ですが、現在では、杜氏の見習いとして求人を出している酒蔵もあり、大学などで醸造について学んだことがあったり、蔵元が指名することで杜氏になれる酒蔵もあるようです。


なくてはならない杜氏の存在

杜氏の存在無くして、美味しい日本酒ができることはありません。

古来より日本の酒造りを先導してきた杜氏たちは、日本酒関連のイベントに参加したり、酒蔵の案内などを行うことで日本酒の魅力を発信し続けています。

杜氏の仕事に感謝して、日本酒を頂きましょう。

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