「山廃仕込み(やまはいじこみ)」と書かれた日本酒のラベルを見たことはありますか?
「山廃って何のこと?」「どんな味がするのかな?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
山廃仕込みとは、昔からある伝統的な日本酒の製法です。現在も続いているのは、山廃仕込みで造られた日本酒に、それだけの魅力があるということでしょう。
この記事では、山廃仕込みの製法や味わい、特徴を詳しく解説します。おすすめのお酒も紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
山廃仕込みとは
山廃仕込みとは、日本酒の土台となる「酒母造り」の製法の一つです。
山廃仕込みを知るうえで欠かせない「速醸酛(そくじょうもと)」や「生酛(きもと)」の説明を交えながら解説していきます。
山廃は「酒母造り」の一つ
酒母とは、蒸米・米麹・水・酵母を混ぜた液体で、日本酒の土台です。酒母には、糖をアルコールに変える役割があります。
酒母造りの目的は酵母を大量に繁殖させることですが、同時に有害な雑菌が混在してしまいます。この雑菌を死滅させる役割があるのが「乳酸」です。酒母造りにおいて、乳酸はとても重要です。
さらに、この乳酸を得る手段によって「速醸系(そくじょうけい)」と「生酛系(きもとけい)」に分かれます。
酒母造りの製法「速醸系」と「生酛系」
酒母造りの製法には「速醸系」と「生酛系」の2種類があります。
どちらも酵母を大量に繁殖させて酒母を造りますが、違いは乳酸の取り入れ方です。
速醸系(速醸酛を指す):醸造用の乳酸を人為的に加える
生酛系:天然の乳酸が発生するのを待ち、乳酸発酵で乳酸を得る
速醸系は生酛系より短期間での酒母造りを可能にし、酒造りの労力が軽減できるメリットがあります。そのため、現在では多くの酒造が速醸系を採用しています。
しかし、昔ながらの製法である生酛系には、速醸系には無い奥深い味わいや香味があり、現在もファンが多いです。
さらに、生酛系は「生酛」と「山廃酛」の2種類の手法に分かれます。
山廃仕込みは「生酛」から派生した製法
生酛と山廃酛は、どちらも自然の乳酸発生を待つことはは共通しています。異なる点は「山卸(やまおろし)」をするかしないかです。
生酛:山卸あり
山廃:山卸なし
山卸とは、木の棒を使って米や麹をつぶして溶かす作業のことです。1つの桶につき、約15分かけてすり潰し、3時間ごとに複数回繰り返します。酒造りの工程上、厳寒期の深夜から早朝にかけて行われるので、過酷な重労働です。
山廃仕込みは、山卸により蒸米をすり潰すのではなく、麹の酵素が入った「水麹(みずこうじ)」を加えることで、山卸と同じ効果を得ています。
山廃の味わいと特徴
一般的に、生酛系で造られた日本酒は、速醸系よりも濃醇なお酒になる傾向があります。
天然の乳酸発酵を待つ生酛系は、酒蔵ごとに味わいが異なります。
山廃は酸味や苦みを感じられるしっかりとした味わい、生酛はより複雑で深みのある味わいとなる傾向にあります。
山廃仕込みも生酛仕込みも、手間と時間がかかります。今も生酛や山廃が造られ続けているのは、日本酒造りの伝統を継承するという意味もあるでしょう。また、旨味や酸など、独特の味わいがファンを魅了していることも大きな理由の一つです。
山廃の楽しみ方
山廃仕込みのおすすめの飲み方は熱燗です。
生酛系は熱燗にすると酸が引き立ち、しっかりとした味わいになります。温度は少し高めの45度から50度くらいが最適と言われていますが、ぬる燗やとびきり燗など、色々な温度による味わいの変化を楽しむのも楽しいですね。
山廃仕込みの日本酒を飲んでみよう
この記事では、山廃仕込みの製法、味わいや特徴、そして楽しみ方を詳しく紹介しました。
「角打ち東京」では飲み切りサイズの日本酒「ぽち酒」を発売しています。
長野県にある「市野屋」の「ほしいちフォレスト」は、山廃仕込みで造られた日本酒です。「ひとごこち」や「しらかば錦」「美山錦」「山恵錦」など、バリエーション豊かな酒米によって、異なった味わいを楽しめます。
山廃仕込みの日本酒を味わいたい方は、ぜひ一度お試しください。