伝統を継承しつつ新たな発想を柔軟に取り入れる「八木酒造部」の高品質な酒造りへのこだわりとは

八木酒造部 八木伸樹社長

幕末の足音が聞こえてきた天保2年に創業。愛媛県今治市で銘酒「山丹正宗」を醸す「株式会社八木酒造部」を訪ねました。
創業以来、品質一筋の酒造りに情熱を傾け、全国新酒鑑評会で最優秀の金賞を多数受賞。その他各品評会でも優秀な成績に輝き、高い評価を得ています。
今回は、そんな高品質な日本酒を次々と生み出す八木酒造部の八木社長にお話を伺いました。八木社長のお話からは、「米・水・人」へのこだわりと、伝統を継承しながらも新しいアイデアを積極的に取り入れる革新的な姿勢を強く感じました。

テロワールへのこだわり

八木酒造部で使用している米は、90%が地元愛媛県産です。

「今でこそ『テロワール』という言葉を耳にするようになりましたが、以前はそこまでこだわりを持つ蔵は多くありませんでした」

と話す八木社長。テロワールとは、その地域の風土や土地の個性のことです。八木社長は、愛媛の気候や自然環境などを活かした酒造りをしたいと考えています。

「鑑評会用の日本酒に山田錦を使っている以外は全て、愛媛県産の酒造好適米「しずく媛」や「松山三井」、その他、愛媛県産の米を使用して酒を造っています」

八木酒造部では、テロワールを活かし、地元に根付いた酒造りにこだわりを持って酒造りに取り組んでいます。

恵まれた、豊富で良質な水

八木酒造部が仕込み水として使用しているのは、四国山脈からの清冽な伏流水。この伏流水は八木酒造部の酒造りにどのような影響を与えているのでしょうか。

「良質な酒造りには、水が一番大事です。水が綺麗であること。そして軟水であることが、良い日本酒を造るためには必要です。うちの井戸水は、今治市でも一番良い水だと言われているんですよ」

と八木社長は語ります。八木酒造部の井戸水は、当時皇太子であった昭和天皇が愛媛県を訪れた際のお茶の水に選ばれるほどの名水です。

「うちのお酒はやわらかいんです。新酒のタイミングで既にやわらかい。これはひとえに水のおかげ。とても水に恵まれています」

多くの日本酒は、新酒の時はまだ硬さがあるのが一般的です。ところが、八木酒造部の日本酒は新酒の時点で既にやわらかく、まろやかだと八木社長は言います。

また、今治市といえば有名なのが「今治タオル」ですが、タオル生地の繊維を染めたり洗ったりするのには大量の水を必要とします。今治は、水に恵まれた土地であり、水の恵みを受けて産業が発展した街だということは、新たな発見でした。

越智杜氏流の継承

八木酒造部がこだわる「人」とはどのようなものなのでしょうか。

「私たちは、越智杜氏流を継承していく立場だと思っています」

と八木社長は話します。
四国には3つの杜氏集団が存在します。愛媛県の「伊方杜氏」と「越智杜氏」、高知県の「土佐杜氏」です。八木酒造部の杜氏は、「越智杜氏」の流れを汲んでおり、脈々と技術を伝承しています。
越智杜氏は広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶしまなみ海道にある「大島」に存在しました。

しまなみ海道サイクリング」より


冬場になると杜氏たちが西日本各地に渡り、酒造りに励んできたという歴史があります。代々、越智杜氏組合の組合長が、八木酒造部の杜氏に就任してきたそうです。(現在越智杜氏組合は解散しています)
冬の寒さが必要条件とされる酒造りにおいて、今治は温暖な気候。その環境の中でいかにして上質な酒を作るか。
越智杜氏は温暖な気候の中でも酒を造る技術を持ち、それが八木酒造部のこだわりでもあると八木社長は語ってくれました。

新しいアイデアと技術

八木酒造部は、伝統を継承しながらも新しいアイデアや技術を取り入れている革新的な酒蔵です。

「以前は、高めの温度で酵母を活動させてお酒を造っていましたが、それでは発酵が早く進み過ぎ、アルコール臭いお酒になるリスクが高かったんです。そのため、長期低温発酵という方法に切り替えました」

長期低温発酵とは、酵母が活動するギリギリの低い温度(約5℃〜10℃)で、長期間ゆっくりと発酵させる作り方です。八木酒造部ではこの方法を取り入れ、新しい酒造りに挑戦したと八木社長は語ります。

「蔵の温度を下げていき、タンクの温度を下げていき。お酒ができるまでの期間もどんどん伸ばしていきました。それにより、フルーティでくせのないお酒ができるようになりました」

また、麹も改良していったと話す八木社長。

「でんぷんを糖に変える力が強い麹を作るようにしました。麹が強ければ強いほど、米から出る糖の量が増えます。この糖は、酵母の餌となり、酵母が糖を食べることで、アルコールが造られます。糖の量が増えると、お酒に残る旨味が増えると言われています」

こういった新しい考え方を取り入れ、酒造りをどんどん改良していった、と八木社長は語ってくれました。

伝統の技を継承しつつも新しいアイデアを取り入れ、より良い日本酒を探求していく八木酒造部。これからの「山丹正宗」にますます期待が高まります。


銘酒「山丹正宗」

「山丹正宗」の「山丹」は、丹波屋という屋号からとり、「正宗」は名刀正宗のようにキレが良い酒、という意味があります。

「最近は純米酒が人気ですが、吟醸酒も飲んでもらいたい」と八木社長は言います。

山丹正宗の「大吟醸酒」は、兵庫県産山田錦を35%まで磨き抜き、越智杜氏伝承の技で仕込んだ山丹正宗の自信作。フルーティでふくよかな吟醸の香りと、柔らかくもキレのある淡麗な口あたり。そしてやさしく広がる上品な旨味を堪能できる逸品です。

山丹正宗「吟醸酒」は、愛媛県産米「松山三井」で仕込みました。上品な吟醸香とすっきり淡麗な飲み口で人気の商品です。2014年にANA国際線ファーストクラスに採用されました。

「しずく媛 純米吟醸」は、愛媛県初の酒造好適米「しずく媛」を100%使用した純米吟醸酒。愛媛の「やさしい」「温暖な」「のどかな」といったイメージをお酒で表現しました。フルーティな香りの、柔らかくてやさしい味わいのお酒です。

伝統を継承しながら、柔軟に新しいアイデアや技術を取り入れ、高品質な日本酒を追求する「八木酒造部」。愛媛今治の銘酒「山丹正宗」をぜひ堪能ください。

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