独特の酒文化を持つ土佐で愛される酒とは。地元愛溢れる若き六代目の挑戦

高木酒造外観

高木酒造外観

1884(明治17)年創業。高知県香南市赤岡町にある「高木酒造」は、高知市から東へ約20km、高知県の中央に広がる香長平野の東南にあります。

赤岡町は、小さな町ながらも「どろめ祭り」「絵金祭り」という全国規模の祭りが開催され、観光と町おこしに力を注いでいる町です。
独特の酒文化がある土佐で、土佐の人に喜ばれる日本酒を醸し続けている高木酒造。今回は、六代目杜氏・高木一歩さんにお話を伺いました。

 

「なかま」という独特な高知の酒文化

日本酒を持つ高木杜氏

六代目杜氏・高木一歩さん

高知県は、酒文化が独特だと一歩さんは言います。高知の酒文化のキーワードは「なかま」だそう。この「なかま」という言葉にはどんな意味があるのでしょうか?

「”なかま”には、土佐弁で”シェア(共有)する”という意味が含まれているんです。”なかまにする”と動詞で使うこともあります。色々なものをなかまにしていくのが高知のお酒の飲み方です」(一歩さん)

土佐の人は「なかま」で飲むのが大好き。宴会では、仲間同士(時にはその場に居合わせた人も)が寄り集まって、お酒、料理、空間もなかまに(共有)しながら楽しむのが土佐人の楽しみ方です。

「個性的な酒文化を持つ土佐で、地元の人に愛される酒を作りたいですね」(一歩さん) 

では、地元に愛される酒とは具体的にどのような日本酒なのでしょうか?

土佐人が好む日本酒とは

高木酒造のショーケース

高木酒造ショーケース 

「なかま」という独特の酒文化を持つ土佐の人が好んで飲む日本酒には、どのような特徴があるのかが気になります。 

「どちらかというと甘味が少なく、舌に余韻が残りにくいお酒が良く飲まれています。後味がスッキリしてついつい杯を進めてしまうお酒ですね」(一歩さん) 

こういった特徴が、高木酒造のブランドらしさになっている、と一歩さんは語ります。 

「それでいて、薄いお酒は好まれません。土佐弁で”たっすいがはいかん”と言います」(一歩さん) 

「たっすい」とは、土佐弁で「薄い」や「軟弱もの」という意味があるそう。 

飲みやすいだけの日本酒ではダメで、土佐酒にはある程度の飲みごたえが必要。かといって、いつまでも舌に甘味が残る酒ではなく、スルスル飲めて杯が次々に進む酒が土佐人の好む日本酒です。 

「お酒に詳しいソムリエさんなどは、例えばカツオのように味がしっかりした料理には強い味の日本酒を合わせます。ところが、土佐人はカツオにもほっそりした日本酒を合わせるのが好きなんです」(一歩さん) 

確かに、料理の味が濃ければ、それに負けないだけのボリュームのある日本酒を合わせがちです。土佐の人はそうではない傾向にあると一歩さんは言います。 

「お酒単体で飲んだ時にはほっそりして、もの足りないと感じるようなお酒も、料理と合わせると味の幅が広がる、そんなお酒が好まれます」(一歩さん) 

まさに、料理と日本酒との「調和」。土佐酒が、料理を引き立てる最高の食中酒と言われる理由がそこにあるのだなと思いました。

料理も杯も空間も「なかま」にする酒。土佐人に愛される酒を造るべく、高木酒造は日々邁進しています。

 

地元の米と酵母で造る「土佐体感地酒」

高木酒造のタンク室

高木酒造のタンク室 

「地元に愛される日本酒を、地元の素材で表現できたらもっと面白い」 

と一歩さんは話します。 

高知県はもともと米の栽培が難しい土地柄です。そのため、昔ながらの酒造好適米は栽培が難しく、高知県の酒造は県外から米を仕入れて日本酒を造っていました。

ですが近年、「吟の夢」や「土佐麗」といった高知県産の酒造好適米が生まれています。 

高知の米と高知の酵母で日本酒を造り始めたのは、一歩さんの父親である、五代目蔵元・直之氏。直之氏は、高知県産の酒造好適米「吟の夢」の誕生をきっかけに、高知県素材100%の酒造りを始めました。 

「他県から米を仕入れて酒を造ってきた歴史があるので、地元のお米で造らないと自分たちのお酒じゃない、という考えはそこまで強くはありませんでした。ですが、地元の米が生まれた現在、地元の米でどう土佐の日本酒を表現するかを、各社考えていると思います」(一歩さん) 

消費者の個性的な酒文化に合わせた酒を、高知の素材で造る。各社がそれを模索している非常に面白いタイミングが今である、と一歩さんは言います。 

また、酵母についても、全て高知産を使っている高木酒造。高知酵母を使って、地元の人が飲みたくなるような香り・酸・味わいを造り出すことに挑戦し続けていると言います。 

「土佐の人は、飲みごたえがあるが飲み疲れないお酒を好みます。これは酵母が大事なんです」(一歩さん) 

どの酵母を使うかは、日本酒の香りに大きく影響します。 

「香りというものは、飲んだ時に舌は疲れないけれども飲みごたえとして感じられます。これを上手に使えば、杯は進むが飲み疲れない酒ができると思っています」(一歩さん) 

高木酒造は、自らの日本酒を「高知体感地酒」と呼んでいます。高知の魅力が詰まった酒のことです。

料理や杯、空間も「なかま」にする土佐の酒文化を、地元の素材で表現する「高知体感地酒」。どのような香りで、どのような味わいなのか。料理と合わせた時にはどんな美味しさが生まれるのか。地元だけでなく、全国の日本酒ファンにも体感してもらいたいという気持ちになりました。

就任一年目での快挙 

杜氏の高木さん

高知県出身の漫画家正木先生の龍奏の擬人化イラスト

現在の六代目杜氏である高木一歩さんが就任一年目の年、「豊能梅 純米大吟醸 龍奏」が「2020LONDON SAKE CHALLENGE 純米大吟醸部門 最高位PLATINUM」を受賞しました。

山田錦や流行の18系酵母ではなく、高知の「吟の夢」と高知の酵母、高知の水といった土佐の素材100%にこだわった日本酒が、純米大吟醸部門で成し遂げた快挙。これはとても素晴らしいことです。 

「受賞したことで、伝統を継承し守っていることからひとつ踏み出せる、新しいことにチャレンジしていいのだと思えました」(一歩さん) 

歴代の蔵元の伝統を継承しながらも、新たな酒造りに邁進する六代目は、今後をどう見据えているのでしょうか。 

「地元を感じるお酒としてブラッシュアップし、飲んだ方が酒蔵に来たくなるようなブランドに仕上げていきたい。世界中の方に香南市、赤岡町を知ってもらいたいですね」(一歩さん) 

高知の魅力を広く広める「高知体感地酒」のさらなる進化がとても楽しみです。

 

「土佐金蔵  特別純米 深海酵母仕込」

日本酒 土佐金蔵

「土佐深海酵母」というとてもユニークな酵母が使用されています。土佐深海酵母とは、深海6200mに4か月間滞在した酵母のこと。主に海洋底から採取された地質を研究する「国立研究開発法人 海洋研究開発機構」が高知県南国市にあることがきっかけで、海底に送られました。深海でストレスをかけることでキレのある酸が生まれています。

酒米は高知の酒造好適米「土佐麗」。土佐麗で醸した日本酒はクリアでキリッとした味わいが特徴。カツオなど魚介類と相性が良く、冷やでも常温でも燗酒もおすすめです。 

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「豊能梅(とよのうめ) 純米吟醸 吟の夢 限定生酒」

「豊能梅」は、高木酒造のメイン銘柄です。

高木酒造と言えば豊能梅、豊能梅といえば「どろめ祭り」の日本酒として知られます。
赤岡町で毎年4月に開催される「どろめ祭り」の名物「大杯飲み干し大会」は、男性は一升(1.8リットル)女性は五合(0.9リットル)をぐいぐい飲み、「飲み干す時間」「飲みっぷり」の総合得点を競うという豪快なイベント。この時に出されるのが豊能梅です。

※「どろめ」とは、生シラス(マイワシ・ウルメなどの稚魚)

「飲みやすく飲み飽きない」という土佐酒の特徴を明快に表すブランドとして、町と共に歩み、地元に長年愛され続けています。

 

「いとをかし 純米吟醸 生酒」 

「いとをかし」は、注文していた酵母とは別の酵母が誤って納品され、酒造りの途中でそれに気が付いたというエピソードを持つ日本酒です。当時の苦労は相当だったものの、これも何かのきっかけと考え、以降同じ酵母で造り続けています。現在はブランドとして立派に一人立ちしました。
華やかなリンゴの香りと、低アルコール(14%)で、女性や日本酒に馴染みが無い人にもおすすめです。甘味がありながらも食中酒として高く評価されています。トマトやカプレーゼなどの洋食、牡蠣とも◎。KuraMasterプラチナ賞受賞。

※KuraMaster:2017年から開催されているフランスで行われる日本酒コンクール。審査員は、フランス人をはじめとするヨーロッパのソムリエや飲食業界のプロフェッショナル。 

「日本酒は日本の本質的な文化である」を信念に、土佐から日本文化を発信する高木酒造。歴代の伝統を継承しながらも、新たな「土佐体感地酒」を生み出すべく、土佐愛溢れる六代目の挑戦は続きます。
料理や人を「なかま」にして楽しむ土佐酒の魅力を、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

色々な日本酒取り揃えています